はじめに
マルチネスは癖が強く、規則性があまりないので、中々難しいメーカーです。
しかし、ルチャの歴史には欠かすことのできないメーカーであり、数々のスーパースターの顔を築いて来ました。
今日は代表作カネックです。
タグなしカネックです。
明らかなマルチネスの本体と縁取り、縫製です。
逆側。この縦に長く皿が狭いのがマルチネスっぽく思います。佇まいがかっこいい。。
時代は80年後期から90年代中期までと考えます。
この正面を見てもわかる通り、70年代のカネックを思わせます。
ステッチは極めて正確でビクトルさんの仕事ではありません。工房にいる助手の縫製です
90年代でもこの様に素晴らしい縫製の物が出てきます。
マルチネスのこの時代のマスクはローラー押さえを使用しています。珍しいです。
ローラー抑えは針先がよく見えるので細かいステッチには適しています。
ロペス、プエブラも使用しています。(時期による)
紐通しも右側の継ぎ足しで補っています。
革を削いではいません。その代わりステッチが入っています。
紐通しのステッチも細かく美しい。
本体が横方向に伸縮する反面皿は縦方向です。マルチネスの方向です。
謎があります。紐通しが内側シングル、外側ダブルステッチです。
裏を見ると、裏張りは内側も外側もシングルステッチ!?
更によく見てみます。
裏張りの下に更に裏張りが隠れています。この生地は普段マルチネスでは使わない裏張りの素材です。
口のステッチも見てみると同じ様に、、、
裏はシングルステッチ。
よく見るとここも赤い生地が見えています。
目の裏は張られていませんね。
口と目の裏張りが分かれていますね。
目は表からの被せ縫いはしていません。
考察
イレギュラーな作品です。タグが無いマルチネス製。
紐通しの裏張りが取り替えているので元はタグが付いていた物を無いものと取り替えたのか!?
考えるに、赤い裏張りを使用し、紐通し、口は縫ったところで、本来の素材に切り替えるために
被せて縫ったと考えます。
口と目の裏張りは一体化しているのが一般的ですが、わざわざ切ってまでして、付け替えています。
マルチネスの拘りなのかもしれません。
この時代のステッチが良いのは、助手製で、革のカッティングはビクトルさんじゃないかと考えます。
メキシコのマルチネスが好きな人と情報交換しました。
マスク一つ、処理の苦労やストーリーが見える良いマスクです。